名古屋市はつらつ長寿プランへのパブコメ
名古屋市健康福祉局高齢福祉部高齢福祉課様
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榑松佐一(名古屋市内・男・64歳)
私は名古屋市の総合事業で生活支援A型に従事しています。その実態を踏まえて意見を申し上げます。
(1)「施策7 介護予防・生活支援の推進」について
コープあいちの生活支援センターなごやでは生活支援A型専門で事業を行っています。2016年6月から2020年10月までにのべ239名に利用していただきました。現在は33名の生活支援員で122名の生活支援を行っています。名古屋市内では大きな事業所のひとつだと思います。
239名の開始年令は61%が80代、26%が70代で、約6割が独居です。要支援1が104名、要支援2が59名、事業対象は76名です。90代では事業対象者から利用を開始する方は少なく21名中2名だけでした。※資料1-(1)
利用開始時の既往症をみると70.2%で骨折・転倒、ひざ痛などの骨格系の症状、46.6%で高血圧・糖尿病、脳梗塞・心筋梗塞など循環器系の症状がありました。このため屈む必要のある床掃除や重いものの買い物などができません。※資料1-(2)
生活支援A型は「あると助かる」程度の支援内容です。しかし上記のように自分ではできないため数か月から何年も風呂やトイレの掃除がされてなかった利用者もいます。また比較的自立度が高い方が利用者ですがコロナ禍で外出機会が減り、一週間に外部の人と会う機会が生活支援員だけという利用者もいます。毎週利用者の状態を確認できる介護予防・生活支援の意義を再確認しています。
「はつらつ長寿プランなごや2030」(案)(以下「案」と略します)にも「施策の展開」として以下のように書かれています。
○本市独自サービスの利用を促進
利用者の心身の状況に応じたサービス提供が行えるよう、本市独自サービスの事業所数及び担い手を増やし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で心身機能が低下し、フレイルの状態にある方も含めてサービスの利用を促進する。
また、サービス利用による介護予防の効果を含めた事業全体の検証を行い、利用効果について周知を図るとともに、より効果的な事業内容について検討する。
○生活支援の充実
各区の生活支援に係る協議体等において高齢者が必要とする生活支援のニーズ把握に努めるとともに、区地域ケア会議とも連携し、地域課題に対する資源開発や地域づくりに取り組み、生活支援の充実を図る。
となっています。
どうして予防型が減り続けるのか
ところが訪問サービスについては予防専門型訪問について全く触れていません。名古屋市は2017年に「介護予防・日常生活支援総合事業における状態像の目安の見直し」を行い予防専門型訪問サービスと予防専門型通所サービスの「基準」を定め、主治医の意見書が必要になりました。その結果、2018年度、2019年度と予防専門型訪問サービスの利用者は減少に転じました。私の事業所にも区分変更で予防型の事業所から移籍してくる利用者が多数いました。※資料2
2020年は新型コロナの影響もありますが、2017年度から2019年に要支援と事業対象者の認定数が1,884人増える一方で予防型専門型訪問と生活支援A型の利用者は323人の減少となっています。2019年度はボランティアによる地域支えあい型を含めても減少となっています。今後の給付見込みをみても予防専門型は減り続ける計画となっています。
また支援の終了状況をみると2年以内が大半です。そのうち自立される方は2割程度で骨折が治った場合が大半です。いっぽう5割から6割が予防・要介護、施設入所・入院などの重度化終了し、利用中に亡くなられた方も11人います。※資料1-(3)
生活支援A型利用者は要支援・要介護の入り口ともいえる段階です。高齢者が健康で自立した日常生活を続けるためにも利用開始時の状態は介護予防の重要なヒントになると思います。またこの状態から自立または現状の生活を一日でも長く続けられるようにすることが生活支援A型の役割となっています。
当事業所では各生き生き支援センターからの利用申し込みがたいへん多くなっていますが、体制的にも距離的にも限度がありお断りすることが少なくありません。なかには最初から身体介護を必要とする方もいて、開始後ひと月で区分変更する例もあります。介護予防の重要さは国も認めている通りです。そのためにはボランティアではなく、一定の知識を有する支援が求められます。
要支援認定者数が増える一方で訪問型の利用者合計が減っている理由を名古屋市ではどう見ているのでしょうか。介護認定にひと月以上かかるため、チェックシートだけで済む事業対象者にして要支援の認定手続きを推奨していないのではないのでしょうか?
介護保険法では「市町村は、日常生活圏域ごとにおける被保険者の心身の状況、その置かれている環境その他の事情を正確に把握」することになっています。名古屋市ではどのように調査・把握されているのでしょうか。
「案」の介護予防・生活支援サービスの見込み量算定にあたっての考え方には「事業対象者・要支援者の推計、介護予防・生活支援サービスの利用状況を勘案」とありますが、利用状況だけを単純に延長したように見えます。市は2017年に状態像の基準を厳しくしたため更新時期に生活支援に変わることがありましたが、予防専門型の利用者を今後も減らし続けるのは何か計画があるのでしょうか。
生活支援型は「採算が合わない」
「案」は「サービスの利用を促進する」としていますが、全国的な調査でも生活支援の事業所・担い手は伸び悩んでいます。この原因について春日井市の調査では「介護予防・生活支援サービス事業の緩和した基準によるサービス、短期集中型サービスを提供するにあたっての課題についてみると、「採算が合わない」が 78.9%と最も高く、次いで「人材の確保・育成」が 34.7%、「経営経費・活動資金の不足」が 23.2%となっています」。名古屋市の調査ではどうなっているでしょうか。
名古屋市の生活支援A型の月額報酬は介護予防の8割程度と低く、この5年間に最低賃金が毎年25円以上引き上げられた中でもほんのわずかしか上がっていません。※資料3
介護保険事業所に様々ある加算も唯一利用者評価の20点があるだけです。そのため、担い手の時給は最低賃金すれすれになっています。事業者のなかには時給1000円で募集しても1回の訪問が45分間で750円のところもあります。シルバー人材センターなど有償ボランティアの事業所もありますが、労災保険が適用されず、移動時の事故や新型コロナの不安があるなか十分な補償もありません。
予防専門型でヘルパーを派遣していたところでも、生活支援に区分変更されると採算が合わないために支援を断る事業所もあります。名古屋市は総合事業者の声をどのように把握しているのでしょうか。
同じ生活支援A型でも横浜市などでは単位数を予防型の9割としています。※資料3。国は第8期介護保険計画にあたって総合事業の上限を自治体の実情に合わせて引き上げることを可能としました。生活支援A型の単価を少なくとも要介護の9割程度には引き上げる必要があります。
(2)「施策 3 社会参加の機会の充実・活躍の場の提供」について
名古屋市では高齢者の社会参加の促進として敬老パスを位置づけてきました。「案」の「今後の事業」のトップにも「高齢者が気軽に外出し、様々な活動に積極的に参加できるよう市営地下鉄等に無料で乗車できる敬老パスを交付」するとして2019年度の敬老パスによる市営交通機関の 1 日当たり乗車人員190,684 人を次期には203,000 人と増やす目標を掲げています。名古屋市は敬老パスには高齢者の健康増進に加え、医療費の削減、地域経済への効果も大きいと言ってきました。
今日は65歳の定年を超えても働く高齢者が増えており、「案」にある市の調査結果をみても「若年者では「就労」の割合が最も高く、次いで「町内会などの地域活動」の割合が高く、「特にない」の割合は 1 割に満たない。
・高齢者が働いている、もしくは働きたいと思う主な理由としては、「生活費の不足を補うため」とする理由が最も多いが、年齢区分が上がるにつれて、その割合が低くなる傾向がある。また、「生活に張りやリズムができるから」と考えている方は約 2 割である。」となっています。
と書かれています。高齢者が仕事に敬老パスを使うことは全く問題がありません。
国の第8期介護保険計画基本指針でも「ボランティア活動や就労的活動など、高齢者の社会参加を通じて、元気な高齢者が生活支援の担い手として活躍することも期待される」としています。
当事業所でも65歳を過ぎた生活支援員7名が利用者訪問の仕事のほかにも民生委員や地域のボランティア活動に活発に活動しています。市内では駐車場の確保が必要になりますが、敬老パスを乗り継いで離れた利用者宅を効率よく訪問しています。通勤定期と違い敬老パスは経路が自由ですのでとても役にたっています。週20回以上乗り降りしている方が少なくありません。介護保険では移動時の交通費支払いは必ずしも義務ではなく、離れた利用者への支援を断ることもあります。高齢者が敬老パスを使って生活支援や介護で就労することを制限するどころか推奨すべきです。
ところが名古屋市は敬老パスに年間730回の上限を設けることになっています。議論の中では「敬老パスを仕事に使っているのは問題だ」という意見もでたと聞いていますが、健康福祉局としてはどのように答えたのでしょうか。
「案」では高齢者が働いている、もしくは働きたいと思う主な理由としては、「生活費の不足を補うため」となっていますが、今後も年金支給開始年齢が引き上げられていくなかでこの傾向は続くと思われます。
敬老パスの回数制限については、財政負担をしている健康福祉局として撤回を求めてください。
以上
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