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2021年2月11日 (木)

生活支援の社会運動(青弓社)を読んで

生活支援の社会運動 「助け合い活動」と福祉政策(中條 共子 青弓社)を読んで

 要支援認定者への生活支援を行う自治体の「総合事業」(日常生活支援総合事業)に関する研究論文が少ないなか、金城学院大学の朝倉美江先生にこの本を紹介いただきました。著者の中條さんは私とほぼ同世代で、自ら介護や生活支援の現場を経験しながら、その実践を踏まえて研究活動をされているという点でも共感できるところがたくさんあります。研究論文をベースにしているので、一般の方には読みづらいかもしれませんが、「総合事業」についての研究で貴重な一冊だと思います。

 著書では生活支援の必要性やこれに取り組む組織の移り変わりを順に追っています。とりわけ90年代に地域の主婦による「たすけあい」の活動が全国に広がっていった時期は私も生協にいて、組合員の活動をよく覚えています。生協のほかにも様々な住民団体がつくられていきました。また95年の阪神大震災を経てボランティアが大きく広がり、NPOが法制化されると助け合いのボランティア団体のなかにもNPO法人格をとるところもでてきました。

 大きく変わったのが2000年からの介護保険制度の開始です。著者は「助け合い活動は介護保険の補完サービスへと変質し、助け合い活動をおこなう住民グループ系団体は激減した。他方、政策サイドでは、全社協が組織化を進めてきたサロン活動などから、新たな助け合い活動への関心が高まった。」と説明しています。

 さらに2010年代からは「地域包括システム構想に基づく介護保険制度再編が進み、新たな助け合いの拡充による生活支援の互助化が推し進められている。」「20154月から介護予防訪問介護や介護予防通所介護の地域支援事業への移行が開始され、173月末までに、すべての自治体で総合事業がスタートし」「一方、15年には介護報酬も大幅切り下げも実施され」ました。

「総合事業の現状と介護報酬の引き下げの影響」については終章で触れています。「総合事業」は国の介護保険の制度から要支援12の利用者を分離して自治体の責任で支援をおこなうものです。このうち訪問サービスでは身体介護が必要な利用者は「従来基準」が適用され介護保険と同様の資格(初任者研修修了者以上)を持つヘルパーが従事します。事業所収入も従来基準で補償されます。身体介護の必要が認定されなかった場合には「生活支援」とされ自治体ごとに「緩和した基準」でサービスが行われます。

訪問型「生活支援」にはAからD型があります。そのうち「生活支援A型」は自治体の行う研修終了者が行います。ここは主に雇用労働者で最低賃金・労災保険などが適用されますが、なかにはシルバー人材センターなどの有償ボランティアを使う自治体もあります。著書は厚労省の委託調査として「訪問型サービスでは、約40%の自治体が予防給付の8割未満とし、さらに14%は7割未満と設定してい」ることを紹介しています。また住民主体(ボランティア)の「生活支援B型」は3.7%にとどまり(2017年)、結局「介護事業者が従来よりも引き下げられた報酬で実施しているのが現状」と指摘します。C型は短期集中の介護予防相談,D型は住民による移動支援です。

私が「総合事業」に関わるようになった19年にはほとんどの自治体で「総合事業」への移行が完了し、その全体像が明らかになってきました。厚労省の調査では要支援認定者が増える中、「総合事業」の訪問利用者数(従来型、緩和型A・B合計)は減り続けています。愛知県内の自治体アンケートでも生活支援A型の利用者人数の増加より通常型の減少が大きく上回っています。(愛知社保協自治体キャラバン)。まさに「(介護)保険料あって介護なし」です。

国は21年度からの第8期介護保険計画のなかで介護予防と日常生活生活支援の重要さは説きますが、具体的な施策は高齢者ボランティアの活用ばかりです。国は要介護者の生活支援を「総合事業」に移そうとしましたが、事業者の強い反対にあい変更を余儀なくされています。著書では「総合事業」が始まる中で岐路に立った住民団体がとった道が紹介されています。「総合事業」のその後の展開のなかで利用者への影響、地域ボランティアの在り方、「自助・共助・公序」も適切な役割分担など引き続きの研究に期待します。

2021年211
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Nakajyou

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