「認知症状のある要介護者が、受け入れ事業所がないために支援を受けられなくなったら利用者・家族の生活はどうなるのか。」
社会保障審議会介護部会で検討されている要介護1・2の生活支援を自治体の「総合事業」に移管する問題について意見をまとめました。もともと「生活支援」についての研究を予定していたところに社保審の議論が続いたので、急きょまとめました。
まとめ部分です。
全文30pは下記から
http://kurechanman.cocolog-nifty.com/sekai/2022/11/post-b5aeb7.html
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[8]総合事業「生活支援」の現状と今後
「上限」見直し、報酬の大幅引き上げを
「緩和した基準」による生活支援A型訪問サービスは報酬が低いため、自治体の研修修了者などの従事者が確保できていない。訪問サービスでは移動時間などもあり、通常の事業所パートと同じような単価では求人は難しい。自治体研修修了者などの支援員を確保するためには、最低限でも最低賃金を上回ることのできる賃金支払いが可能となる報酬への引き上げは急務である。
生活支援A型を行っている事業所では資格を有する訪問介護員で対応しているところが大半を占めているため事業採算が悪化している。京都市のように訪問介護員による生活支援には要介護の生活支援報酬を受けられるところでも生活支援A型の利用は厳しくなっている。訪問介護員の確保が厳しいなか、生活支援単独で訪問サービスを行うことは訪問介護員の確保をいっそう難しくしている。
営利企業の中には生活支援A型を辞めた事業所もあるが、現在利用者のいる事業者でも新規利用者の受付を断っているところが少なくない。近年はコロナ禍による利用の中止や支援員の交代要員確保など事業所の負担も大きくなっている。
上限を撤廃し、目安を要介護の生活支援報酬の9割に引き上げ、処遇改善加算などの適用を行う必要がある。
要介護1・2の「総合事業」移管は中止を
国は要介護1・2の生活支援を「総合事業」に移管しようとしているが、事業者の多くが現利用者については継続してサービスを行うものの、新規利用者については半数以上の事業者が受け付けないと回答している。このまま「総合事業」への移管が行われれば、多くの利用者が認定されても受け付ける事業者がないために支援を受けられないことが多発すると思われる。
先にみたように若くから生活支援を必要とする利用者もいる。そのため介護をする家族の年齢も若く、仕事のため日中独居の高齢者も少なくない。そのうえ認知症状のある要介護者が、受け入れ事業所がないために支援を受けられなくなったら利用者・家族の生活はどうなるのか。
また「総合事業」では同じ介護保険料を取られながら行政や事業所の都合によってサービスを受けられる地域と受けられない地域がある。要介護1・2の「総合事業」移管はさらに地域格差を拡大しかねない。この点も見直しが必要と考える。
あらためて生活支援の役割とは
一切他人との関りがなく、部屋に他人を入れることに拒否感をもつ高齢者も少なくない。外出はできるが掃除はできない、生ごみを出せないままゴキブリぞろぞろのゴミ屋敷という新規利用者もいる。
「ヘルパーは生活援助を通じて利用者を理解し、生活援助の中でキッカケをつかみタイムリーに働きかけ、改善を引き出す。」「生活の後退からの回復、日常生活の維持、生活の改善、これが住み慣れた自宅で行われるところにホームヘルパーならでは援助がある」「健康で生活問題のない人が、自分の手代わりに頼む『家事代行』とは全く異なる」(小川栄二、立命館大学)
高齢者にとって、自分の暮らし方に合わせた生活支援は社会的交流回復の糸口となる。「認知機能の低下防止要因の一つが社会的活動や他者との交流である」(「高齢者における社会的相互作用の重要性」熊田孝恒Aging&Healh31号)。たかが週1回の掃除や調理であっても1年間で50回、しかも定期的な訪問は大きな意味がある。
改めて日常生活支援の果たす役割について見直すことが重要と考える。
以上
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