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2025年5月19日 (月)

「生活保護バッシング」注意報

2025年516

生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と議論を求める共同声明

~「生活保護バッシング」注意報を発出します~

 今年3~4月、講談社が運営するウェブマガジン「FORZA STYLE」において、生活保護バッシングや外国人ヘイトを煽る記事が次々と掲載されるという問題が起こりました。
 特に4月8日と9日にアップされた下記の2つの記事は、Yahoo!ニュース等にも転載され、一時期、Yahoo!ニュースのコメント欄が生活保護利用者や外国人に対する差別的なコメントで埋め尽くされるという状況が発生しました。

「働くのダルいし生活保護」労働なしで生きる権利を求める人々。関係者が語る「真面目に働いている人がバカをみる国」ニッポン【専門家解説】
「誰が申請を?」来日間もない外国人の生活保護に疑問を抱く貧困母子家庭。逆転する「貧困」と「生活保護」の暮らしぶりに今思うこと【識者解説】

 この2本の記事は、いずれも「関係者」の話を聞いた「専門家」「識者」による解説をライターがまとめたという体裁になっていましたが、情報源となっている「関係者」とは「義姉が元ケースワーカーだったと話す女性」や「外国人受給者がアパートのお隣さんだと話す女性」でしかなく、問題を解説する「専門家」「識者」とは思えない「危機管理コンサルタント」でした。裏取りもしていない噂話レベルの情報をもとに特定のグループの人たちへのマイナスイメージを植え付けるという手法は、ヘイトスピーチでよく見られる悪質な印象操作です。

 講談社という大手出版社が運営するサイトにおいて、生活保護利用者や外国人への差別を扇動する記事が掲載されたことの衝撃は大きく、多くの人が批判の声をあげました。Yahoo!ニュースは411日までに上記の2つの記事を削除し、講談社「FORZA STYLE」も12日までに上記を含む生活保護関連の記事を全て削除しました。両社とも削除の理由は明らかにしていませんが、批判を踏まえた対応であったと推察されます。

 言うまでもなく、生活保護利用者への偏見・差別を煽る報道は、生活に困窮する人々を制度から遠ざけ、制度を利用している人々の尊厳を傷つけます。
 過去には、社会保障費の削減を主張する政治家が自らの政策実現のために制度利用者に対するバッシングを人為的に引き起こしたり、悪用したりする例も散見されます。
 2012年には、一部の国会議員が主導する形でテレビや週刊誌で生活保護バッシングが過熱。バッシングを通して広がった生活保護の制度や利用者に対するマイナスイメージが、過去最大の生活保護基準引き下げ(2013年~2015年)という政策決定への呼び水となりました。

 過去最大の生活保護基準引き下げに対しては、全国各地の生活保護利用者が原告となって減額の取り消し等を求める「いのちのとりで裁判」が提起されています。「いのちのとりで裁判」では、これまで言い渡された41の判決のうち、原告が2615敗(地裁1911敗、高裁74敗)と大きく勝ち越しており、527日には大阪訴訟と愛知訴訟に関する最高裁の口頭弁論期日が設定されました。今夏には、最高裁の統一判断が示される見通しであり、一連の裁判はクライマックスに差し掛かっています。

 今後、「いのちのとりで裁判」の最高裁決着が近づくにつれ、生活保護に関する報道やSNS発信が増加することが予想されますが、生活保護への社会的注目が高まることに便乗して、生活保護バッシングや外国人ヘイトを扇動する者が現れることが懸念されます。
また、今年6月に予定されている東京都都議会議員選挙や、7月に実施されると見られる参議院議員選挙において、選挙活動という形で生活保護バッシングや外国人の生活保護利用をめぐるヘイトが拡散されてしまう危険性もあります。
 司法や政治における上記の状況から、私たちは特に今年の春から夏にかけての時期、生活保護に関連するバッシングやヘイトに注意すること を呼びかけます。

 全てのメディア関係者に対しては「生活保護に関する偏見や差別を助長する報道をおこなわない」という基本姿勢を明確にした上で、正確な情報に基づく冷静な報道をおこなうことを求めます。
 また、プラットフォーム事業者に対しては、偏見・差別を煽る誤情報や真偽が不確かな情報の拡散を防ぐための措置を採ることを求めます。
 生活保護制度をめぐる議論が、誤った情報や真偽が不確かな情報によって左右されたり、差別を煽る印象操作によって誘導されたりすることはあってはなりません。事実に基づいて冷静に議論がおこなわれる環境をつくるため、SNS利用者を含むすべての関係者にご協力をお願いいたします。

いのちのとりで裁判全国アクション / 生活保護基準引下げにNO!全国争訟ネット

生活保護問題対策全国会議 / 一般社団法人つくろい東京ファンド/全国生活保護裁判連絡会 / 全国生活と健康を守る会連合会(全生連)/きょうされん / 労働者福祉中央協議会(中央労福協) / 障害者労働組合/全国クレサラ・生活再建問題対策協議会 / NPO法人ささしまサポートセンター/全国クレサラ・生活再建問題被害者連絡協議会 / 一般社団法人 人権精神ネット/日本自治体労働組合総連合(自治労連) / 北関東医療相談会
生活保障支援ボランティアの会 / ビッグイシュー名古屋ネット/NPO法人さんきゅうハウス / 「生活保護費大幅削減反対!三多摩アクション」
三多摩合同労働組合ゆにおん同愛会 / 府中緊急派遣村 / チマ・チョゴリ友の会/月末食堂委員会 / 狛江派遣村 / コロナ災害対策自治体議員の会
生活保護制度を良くする会(北海道) / いのちのとりで裁判青森弁護団/いのちのとりで裁判あおもりアクション / 生存権裁判を支援する長野県の会/生活保護基準引下げ違憲訴訟群馬弁護団 / 人権を主張するいしかわの会/生活保護基準引下げ違憲訴訟富山弁護団 / -貧困ネットワークとやま/生活保護基準引下反対訴訟千葉県弁護団 / 生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会/反貧困ネットワーク埼玉 / 生存権にかかわる裁判を支援する静岡の会/西濃生活と健康を守る会 / 生存権アクションぎふ / 有限会社おとくに福祉研究所/生活保護基準引き下げ反対愛知連絡会 / きょうと福祉倶楽部/京都・新生存権裁判を支援する会/生活保護基準引下げ違憲大阪訴訟弁護団 / 引下げアカン!大阪の会/大阪クレサラ・貧困被害をなくす会(大阪いちょうの会)/生存権裁判を支援するわかやまの会 / 奈良県の生活保護行政をよくする会/和歌山生存権裁判弁護団 / いのちのとりで裁判奈良弁護団/兵庫県生存権裁判を支援する会 / 広島生活保護裁判を支援する会/人間らしく生きたい!人間裁判ささえる岡山の会/いのちのとりで裁判愛媛アクション / いかんよ貧困・福岡の会/生活保護基準引下げ違憲処分取消し請求福岡訴訟弁護団」/北九州市社会保障推進協議会 / いのちのとりで裁判沖縄弁護団/北陸生活保護支援ネットワーク石川 / 近畿生活保護支援法律家ネットワーク      

(順不同 計60団体)

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2025年5月12日 (月)

厚労省「中間とりまとめ」についての意見

厚労省「中間とりまとめ」についての意見
2025年5月10日
地域と協同の研究センター 榑松佐一
厚労省第5回検討会「2040 年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ」(4/10)について意見をまとめました。外国人介護労働者の拡大とも関係するので、関係者の意見をお聞きしたいと思います。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/01.pdf


<1>前提条件について
2. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築や支援体制の方向性
町村部では約 50%の市町村で 2020 年以前に 65 歳以上人口が既にピークを迎えている。いっぽう、都市部中心の約 15%の市町村では 2040 年以降にピークとなる。
在宅サービスは町村部で約 30%の保険者が 2024 年以前に需要のピーク。いっぽう、政令市・特別区・県庁所在地では約 80%の保険者が 2040 年以降に需要のピーク。
施設サービスは町村部の約 23%が 2024 年以前に需要のピーク。都市部では約84%の保険者が 2040 年以降にピークを迎える。(要旨 太字は引用部分、以下同)
2025 年に団塊の世代が 75 歳以上となり 2040 年には 65 歳以上の高齢者数がピークを迎えることは広く知られてきた。「中間まとめ」では高齢化や人口減少のスピードには地域によって大きな差があることが指摘されている。地方ではすでに高齢者対
策が急務となっており、大都市では15年後のピークに向けた対策が求められている。
介護では高齢者人口のピークとともに介護労働者の確保も念頭におくことが重要である。外国人労働力の確保もこれと合わせた対策が必要となる。また今回議論されている外国人の移籍規制との関係で押さえておきたい。

<2>中山間地対策について
(2)中山間・人口減少地域におけるサービスを維持・確保するための柔軟な対応
職員の配置基準について
「訪問介護と通所介護等における配置基準等をより弾力化してサービス間の連携・柔軟化を図る」
「現行の介護予防・日常生活支援総合事業(※)においても・・・近接した地域でサービスを受けることを可能としていく」
昨年からの「まさかの訪問介護報酬引き下げ」で訪問介護事業所の倒産・廃業が続出している。すでに訪問介護事業所が一つもない自治体が昨年末時点で全国107町村に上っている。事業所が残り1の自治体も272市町村で事業所ゼロの自治体と合わせると、全自治体(1741 市区町村)の5分の1超を占める。介護保険が始まった 2000年には自治体が 3252 あったことを考えると当時の自治体でみると一つもないところは相当数に及ぶ。
通所サービス職員を訪問介護にも使うというが、事業所周辺の訪問であれば可能という程度である。自治体の総合事業生活支援サービスAはすでに壊滅状態となっている。予防介護も報酬の低さでヘルパーの時給が払えず赤字の原因となっており、支援範囲を広域化すれば事務所への移動にさらに時間がかかることになる。
根本的には「現在の訪問系サービスの報酬体系については、「回数」を単位として評価しているため、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動に係る負担が大きい。このため、地域の実情に即して、持続的なサービス提供を確保するためには、こうした状況に対応する方策を検討することが必要」というとおりで、この指摘は重要である。また中山間地だけでなく都市部でも急務である。

<3>大都市対策について
(3)大都市部における需要急増を踏まえたサービス基盤整備のための適切な対応「大都市部においては、人口の密度が高いことに加え、施設や住まい、在宅サービスの密度も高いことから、コンパクトなサービス提供が可能」
NHK「クロ現」でも指摘された通り、東京・大阪でも訪問介護事業所の倒産が相次いでいる。都市部では職員の確保が困難なところが多い。高齢者人口が多い都市部では大型の高齢者施設があるいっぽう、小さな訪問介護事業所も多い。都市部では駐車場所の確保などで車での訪問ができないところもあり、移動時間は必ずしも短くない(調査資料図表 22)。そのためヘルパーと利用者が近いところに小さな事業所がある。
国は事業所加算を重視しているが、対応できていない事業所も少なくない。賃金を上げるためには基本報酬の引き上げがもっとも有効である。


<4>外国人介護人材について
3.介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援の方向性
(2)国や地方における介護人材確保に向けた取組
最低賃金が毎年 5%程度上がっており、時間給で働く労働者の賃金が上昇している。介護職は「公定価格の報酬が主な収入源であ」り、訪問介護報酬には移動時間が含まれないことから、実働時間で計算すると最低賃金+@程度となっている。「介護人材確保は最大の課題であり、・・・近年の物価高や賃上げに対応し、全産業平均の動向も注視した上で、賃上げや処遇改善の取組を推進していくことが必要」という指摘が最も重要である。24年度の訪問介護報酬の引き下げは、これに反するものであった。「国においては・・・外国人材の受入環境整備に取り組んでいる」として今春から外国人実習生・特定技能外国人による訪問介護を可能とした。日本人職員でも「訪問介護については、「一人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安」といった特有の理由により、他の介護職種に比して有効求人倍率が高い状況にある」。そのため外国人労働者については新たに初任者研修を受けさせたり、同行支援、特別なハラスメント対策も必要となるなど事業者にはたいへん大きな負担となりかねない(「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点」)。これにより日本人職員の賃金が上がらず、ますます離職率が上がりかねない。
大型施設訪問の利益確保のため?
「高齢者数が増加する一方で、介護保険施設の稼働率が低下傾向にある等の実態も踏まえてサービス需要等を推計すべきであるとの意見があった。」との記述があるが、これについては何のコメントもついていない。
結局外国人実習生の訪問解禁は人手不足で稼働率が低下している大型施設型訪問介護事業所への救済策ではないのか。留学生から特定技能・介護福祉士・在留資格「介護」へ「介護福祉士養成施設は・・・学生の減少等に伴い閉校する学校も増える中・・・令和6年度入学生において外国人留学生が約半数を占めて」いる。日本語会話もままならない技能実習生を訪問介護に使うより、養成校修了者を特定技能として就業させ、そ
の間に在留期間に制限のない介護福祉士をめざすほうが事業者にとって長期的に安心できるのではないか。


<5>地域包括ケアの現状と今後
厚生労働省においては、2025年(令和7年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
しかし、実際には大手介護事業者を中心に日常生活支援A型は受付けず、近年は予防型を断る事業者も出てきている。愛知社保協の調査では愛知県下の要支援含む事業対象者数が2019年11万3803人から2023年12万6222に増加する一方で、予防型利用者は16,715人から15,663
人に、生活支援A型は4,881人から4,196人へと逆に減少している。とくに生活支援A型報酬は月額 900 単位に満たない自治体が多く最低賃金の支払いが困難になっている。
「地域ごとの介護予防・日常生活支援総合事業の実施内容やその効果を精緻に分析・検証することが必要。データベースをつくり見える化すべきとの意見」が重要である。

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