厚労省「中間とりまとめ」についての意見
厚労省「中間とりまとめ」についての意見
2025年5月10日
地域と協同の研究センター 榑松佐一
厚労省第5回検討会「2040 年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ」(4/10)について意見をまとめました。外国人介護労働者の拡大とも関係するので、関係者の意見をお聞きしたいと思います。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/01.pdf
<1>前提条件について
2. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築や支援体制の方向性
町村部では約 50%の市町村で 2020 年以前に 65 歳以上人口が既にピークを迎えている。いっぽう、都市部中心の約 15%の市町村では 2040 年以降にピークとなる。
在宅サービスは町村部で約 30%の保険者が 2024 年以前に需要のピーク。いっぽう、政令市・特別区・県庁所在地では約 80%の保険者が 2040 年以降に需要のピーク。
施設サービスは町村部の約 23%が 2024 年以前に需要のピーク。都市部では約84%の保険者が 2040 年以降にピークを迎える。(要旨 太字は引用部分、以下同)
2025 年に団塊の世代が 75 歳以上となり 2040 年には 65 歳以上の高齢者数がピークを迎えることは広く知られてきた。「中間まとめ」では高齢化や人口減少のスピードには地域によって大きな差があることが指摘されている。地方ではすでに高齢者対
策が急務となっており、大都市では15年後のピークに向けた対策が求められている。
介護では高齢者人口のピークとともに介護労働者の確保も念頭におくことが重要である。外国人労働力の確保もこれと合わせた対策が必要となる。また今回議論されている外国人の移籍規制との関係で押さえておきたい。
<2>中山間地対策について
(2)中山間・人口減少地域におけるサービスを維持・確保するための柔軟な対応
職員の配置基準について
「訪問介護と通所介護等における配置基準等をより弾力化してサービス間の連携・柔軟化を図る」
「現行の介護予防・日常生活支援総合事業(※)においても・・・近接した地域でサービスを受けることを可能としていく」
昨年からの「まさかの訪問介護報酬引き下げ」で訪問介護事業所の倒産・廃業が続出している。すでに訪問介護事業所が一つもない自治体が昨年末時点で全国107町村に上っている。事業所が残り1の自治体も272市町村で事業所ゼロの自治体と合わせると、全自治体(1741 市区町村)の5分の1超を占める。介護保険が始まった 2000年には自治体が 3252 あったことを考えると当時の自治体でみると一つもないところは相当数に及ぶ。
通所サービス職員を訪問介護にも使うというが、事業所周辺の訪問であれば可能という程度である。自治体の総合事業生活支援サービスAはすでに壊滅状態となっている。予防介護も報酬の低さでヘルパーの時給が払えず赤字の原因となっており、支援範囲を広域化すれば事務所への移動にさらに時間がかかることになる。
根本的には「現在の訪問系サービスの報酬体系については、「回数」を単位として評価しているため、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動に係る負担が大きい。このため、地域の実情に即して、持続的なサービス提供を確保するためには、こうした状況に対応する方策を検討することが必要」というとおりで、この指摘は重要である。また中山間地だけでなく都市部でも急務である。
<3>大都市対策について
(3)大都市部における需要急増を踏まえたサービス基盤整備のための適切な対応「大都市部においては、人口の密度が高いことに加え、施設や住まい、在宅サービスの密度も高いことから、コンパクトなサービス提供が可能」
NHK「クロ現」でも指摘された通り、東京・大阪でも訪問介護事業所の倒産が相次いでいる。都市部では職員の確保が困難なところが多い。高齢者人口が多い都市部では大型の高齢者施設があるいっぽう、小さな訪問介護事業所も多い。都市部では駐車場所の確保などで車での訪問ができないところもあり、移動時間は必ずしも短くない(調査資料図表 22)。そのためヘルパーと利用者が近いところに小さな事業所がある。
国は事業所加算を重視しているが、対応できていない事業所も少なくない。賃金を上げるためには基本報酬の引き上げがもっとも有効である。
<4>外国人介護人材について
3.介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援の方向性
(2)国や地方における介護人材確保に向けた取組
最低賃金が毎年 5%程度上がっており、時間給で働く労働者の賃金が上昇している。介護職は「公定価格の報酬が主な収入源であ」り、訪問介護報酬には移動時間が含まれないことから、実働時間で計算すると最低賃金+@程度となっている。「介護人材確保は最大の課題であり、・・・近年の物価高や賃上げに対応し、全産業平均の動向も注視した上で、賃上げや処遇改善の取組を推進していくことが必要」という指摘が最も重要である。24年度の訪問介護報酬の引き下げは、これに反するものであった。「国においては・・・外国人材の受入環境整備に取り組んでいる」として今春から外国人実習生・特定技能外国人による訪問介護を可能とした。日本人職員でも「訪問介護については、「一人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安」といった特有の理由により、他の介護職種に比して有効求人倍率が高い状況にある」。そのため外国人労働者については新たに初任者研修を受けさせたり、同行支援、特別なハラスメント対策も必要となるなど事業者にはたいへん大きな負担となりかねない(「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点」)。これにより日本人職員の賃金が上がらず、ますます離職率が上がりかねない。
大型施設訪問の利益確保のため?
「高齢者数が増加する一方で、介護保険施設の稼働率が低下傾向にある等の実態も踏まえてサービス需要等を推計すべきであるとの意見があった。」との記述があるが、これについては何のコメントもついていない。
結局外国人実習生の訪問解禁は人手不足で稼働率が低下している大型施設型訪問介護事業所への救済策ではないのか。留学生から特定技能・介護福祉士・在留資格「介護」へ「介護福祉士養成施設は・・・学生の減少等に伴い閉校する学校も増える中・・・令和6年度入学生において外国人留学生が約半数を占めて」いる。日本語会話もままならない技能実習生を訪問介護に使うより、養成校修了者を特定技能として就業させ、そ
の間に在留期間に制限のない介護福祉士をめざすほうが事業者にとって長期的に安心できるのではないか。
<5>地域包括ケアの現状と今後
厚生労働省においては、2025年(令和7年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
しかし、実際には大手介護事業者を中心に日常生活支援A型は受付けず、近年は予防型を断る事業者も出てきている。愛知社保協の調査では愛知県下の要支援含む事業対象者数が2019年11万3803人から2023年12万6222に増加する一方で、予防型利用者は16,715人から15,663
人に、生活支援A型は4,881人から4,196人へと逆に減少している。とくに生活支援A型報酬は月額 900 単位に満たない自治体が多く最低賃金の支払いが困難になっている。
「地域ごとの介護予防・日常生活支援総合事業の実施内容やその効果を精緻に分析・検証することが必要。データベースをつくり見える化すべきとの意見」が重要である。
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